21-22 深夜の放置、ホッタラケの島(ネタバレ)

21日
神泉にてナレーション収録。
言われて気づくイントネーションで、道民であることを再確認。
いや、これらの発音はちょっと、10年以上気づかなかった・・・

先日観たDVDは「ホートン 不思議の国のダレダーレ」。

グリンチ」「キャットインザハット」などで
おなじみドクター・スースの絵本が原作。
主人公は、ジャングルに住む気のいい象のホートン。
花の上に乗ったホコリの中にある小さな国「ダレダーレ」の存在に気づき、
まさに吹けば飛ぶようなダレダーレ国を安全な場所に運ぶ旅をすることに。

レダーレの市長と交流をしながら進むホートンだが、
意地悪なカンガルーは、
「ホコリの上に人が住んでいるなどと妄言を吐くホートンは子供の教育によくない」
と、ホートンをジャングルから追い出す準備を固めるのだった・・・

「どんなに小さくても人は人だ」というホートンと、
「見えないもの、触れられないものは存在しない」
というカンガルーに、あまり意見の差を感じないというか、
ホートンも実際、ダレダーレの国から声が聞こえてきて
存在に気づくわけであるし、
ホートンを追い出そうとするジャングルの皆も、
その声さえ聞けば、皆存在を信じる性格のよさがある。

ホートンにはかすかに聞こえる(象は耳が大きいからね)
レダーレの住人の声をどう届かせるか・・・というところで、
すれ違いを見せてゆくわけだが、そこがちょっとダレてしまうところもある。

「いいことしか起こらない国」とナレーションでハッキリと伝えるダレダーレでも、
人間関係のギスギスはあったりして、そういうところも心苦しい。

しかし、この作品は、そうしたもったいなさで
堅くなりそうになる心を溶かす暖かみがある。

3DCG映画ではあるが、カートゥーンの「よけいなところまで動く、
過剰なまでの身振り手振り」を、実になめらかに見せてくれて、
キャラクターの魅力を上げており(さらにホートンの声はジム・キャリー!)、
水の流れやホコリのフワっとした表現などはここにきわまる、いった感じで
とても気持ちがいい。

そしてダレダーレ国の様子もすばらしい。
ホートンのうっかりした動きで地震が起きるが、
建設中の建物がその揺れで勝手に出来てゆくなど、
本当、「夢のある」という表現がピッタリだ。
街中から飛び出る楽器や、天体観測所の仕掛けなど、
管弦楽器を組み合わせて巨大な物体を作り上げてゆく感じもたまらない。
調べてみるとスタッフは「ロボッツ」などを手がけていたとのこと。なるほど。

気になる部分はありながら、
最後に「住民の声をジャングルの皆に聞かせよう」というシーンで
見事にジンと来てしまうのだから、とてもいい力技を見せてもらいました。


報われなさや滅びの美学も好きなんですが、
こうしたお話には「ちゃんとみんなが幸せになっている」という絵は、絶対に必要なんですよ。



22日
新宿ジュンク堂にて、枡野浩一さんと内田かずひろさんによるトークセッションを。
「絵と言葉の間で」というテーマで、ガチガチの文章人間、枡野さんが、自書に選ぶ
絵の世界観へのこだわり、そしてサービス精神を、
そして絵本、漫画の世界で「書いて描く」内田さんの、やわらかなムードの中にも、
絵本へのこだわり(宇宙船ペラペランス?の本を持って左右に歩く姿に笑顔になりつつも、引き込まれる)を聴く2時間。
お二人に共通して感じるは、自分の特性を何よりも知っているというどっしりした柱である。
いや、背筋が伸びました。
本も何冊か買わせていただきまして、今から楽しみに読みます。



その後、新宿バルト9にて映画「ホッタラケの島」を。

人間がほったらかしにしたモノをいただき、
それを魔法で加工して暮らしている「ホッタラケの島」がどこかにあった。

高校生のはるかはお母さんに先立たれ、マンションで父親と二人暮らしだが、
何せ年頃。父親を毛嫌いし、亡き母のことを思って二人暮らしに不満をぶつけている。
思い立ち、小さい頃に願掛けした神社へ行き、
「お母さんの思い出の手鏡を見つけてください」と願をかけるが、
そこではるかは思わぬ者と出会い、呼び込まれるように「ホッタラケの島」へ・・・というストーリー。


なんか「ホートン」をほめた日記で
こうやってグチを書くのはフェアじゃない感じがしますが、こ、これは・・・よくない。


ミニスカートの女子高生の太股をじっくり描きながら
パンツは見せない絶妙な角度、十代の女の子のぷっくりした頬、
などのこだわりは確かに感じる。だが、他がかなしいかな、堅い。


ツネ様がモノを取ってゆくという設定だが、
ホッタラケの島の住人に「毛感」がまったくない。
顔はキツネでも毛がまったくないものだから、
スターウォーズの酒場にでてくるクリーチャーのように見える。
このあたり、予算の関係なのか・・・と勘ぐりたくなってくる。


その上で、お話も気になるところが多い。多すぎる。
一つ一つ言うとネタバレになるが、泣かせどころを逃しすぎるし
(テオがはるかを離した後、部屋でスタンプカードとレコードを合わせるシーン、
あれ順番逆でしょう!「ああ、よけいなお荷物が減ってよかったよかった」とうそぶくが、
確実に心に背負うものがある。そこのトリガーとしてレコードを流し、そして涙でしょ!
そうすりゃ俺なんてウワーとか言って泣いてますよ!「ムジナ」8巻読んどいてくれよ!
と、このシーンだけは強く言っておきたい。本当にもったいなかった)、
「なんでこうなっているのかな?」と感じた後、後付けのセリフでその設定を説明するなど
(シアターでぬいぐるみが動くシーンなど)、あれこれ順番が違う。


そしてホッタラケの島自体の状況もよくわからない。
男爵がお金の代わりになるスタンプカードを発行しているのはわからなくはないが、
それによる権力構造、簡単に言えば具体的にいばっているシーンを、
飛行船を飛ばすだけでOKとしているのは、おかしい。


そして最後の最後だって、ホッタラケの島がこれからどうなるのか、
テオのポジションはどうなのか。ということを片づけていない。
命を吹き込むという鏡が、あれほど島じゅうにばらまかれた後の世界を
想像すること自体がおそろしいが、何より意地悪三人組が
「見直したぜ」的なことをテオに直接言わないとダメでしょう!
それであいつが「島ではもうあまりバカにされることはないんだろうな・・・よかったよかった」
と思わせなきゃ気持ち悪いよ!なめられっぱなしか!


そして人間社会でテオとはるかをもう一度接点を持たせるような演出もほしいでしょ!
なんとなく「ハンバーグ食べたい!」で終わられても、
最近の宮崎駿みたいな神話的世界観じゃないんだから、
やっぱりみんながいい思いをしている。
その上で人と別れ、それでもどこかにいるのかもしれない・・・という含みは必要なんだよ。
ハッピーな話をするんだったら、やっぱりそれはいるんですよ。


いろんなものをほったらかしにした上、観客をホッタラケにしてしまった・・・
というコメントは6百万人くらいが書くと思うのでNGにしておきますが、
久々に劇場でやらかしてしまった映画でした。


日本の巨匠、宮崎駿が明らかに「気持ちのいいお話」を描くつもりがなくなっている今、
アニメの「笑って泣ける」の最高峰にあるのは、3DCG映画のピクサーです。
だから、ついこのカテゴリーで、日本の力を見せていただきたい、
プロダクションIGの3DCG長編映画!ということで勝手に日本を託して観ていた感がある。
それは反省します。


と、ここまで書いて冷静になったのでフォローするわけではないですが、
いいシーンもあって、スカートなどもそうですが、
やっぱり空中戦とか、飛行船から花火の弾丸が出るとことかはよかったですよ。
それで押せればよかったのだが・・・
あ、あと綾瀬はるかさんの吹き替えだ。「Mr.インクレディブル」で、「ただものではない…」
と思っていたが、やっぱりいいですね。



  • 写真

まったく関係ないが、髪の生えた仲根。
母親からプレゼントされたとのこと。