2.10−15 アメリカへ

10日
アメリカはポートランドに向けて出発を。

急な出だしだったが、今回奥さんがポートランドのギャラリー
ヘリオンギャラリー「Hellion Gallery」にて個展を開催しているので、
それについてゆく形で飛行機に乗り込んだのだった。

9時間のフライトということだったが、
チンチンに熱された機内食を食べ、
寝てからスティーブ・カレルの「デート・ナイト」という
軽すぎるコメディを観ていたら着いた。
(あわや倦怠期か・・・という夫婦がデートでハメを外し、
予約でいっぱいのレストランにて偽名を使い、他人の席を取ったところ、
脅迫状を出した泥棒と間違えられて…という内容。
吹き替えの声も軽かったので、特にピンチ感がなかった)

意外と早かった気もするが、空港での入国審査の方が長かった気がする。
というほど時間がかかる。管理官もまた軍事教練の教官か。といった身なりの、
厳格を絵に描いたような人間で、僕の先に審査を受けた幼い子供を連れた中国人らしき女性に、
提出したパスポートを何度も見ながら
「この子は本当にあなたの子供か?!」といった解釈で子供に詰めより、
子供の泣き顔で写真の照合が難しくなるという、つらい一コマを見せられるのだった。
ちなみにその女性は最後のX線のゲートでもひっかかり、
トランクの中身を全部空けられていた。
その中には日本のふりかけが大量に入っており、よくわからないが親近感はわいたよ。

空港では「Hellion Gallery」のオーナーである、
マット・ワグナーさんが迎えに来てくれた。
(アメコミ好きならばグッとくるお名前であるが、関係はもちろんない)
マットの車に乗ってポートランド空港からギャラリーへ。

着陸の時も「雲の上にまだいるのか…」と思ったら地面に着く
というサプライズだったが、空港近辺は濃い霧がたちこめており、
最初に覚えた生きた英単語は車の中でマットがしきりに連発していた
「ベリーフォギー(霧すげえ)」というものだった。

時間にして朝の8時。見知らぬ土地をゆったりと走る車のフロントガラスに、
じわりと霧の中から現れる人気のない町並み。
という、映画「ミスト」を思い出さずにはいられない光景に、
さみしい風景が好きな身としてはテンションがあがる。

そのままベトナム街や中華街を抜けて、
アートギャラリーがぎっしりと並ぶ「パール通り」へと。
この時点でまだ午前9時くらいだったので、朝食を食べつついろいろとお話を聞く。


*写真
創業50余年という、ザ・アメリカのダイナーといったところで食べる朝食。
分厚いパンケーキで野太いソーセージを巻いた「PIG BASKET」というもの。
メープルをかけて食べる。コーヒーとチップを入れて800円くらい。
アメリカンドッグの母艦のような存在であり、実に重い。早速この食べ物で洗礼を受ける。


パール通りは日系人が昔住んでおり、
戦争が終わってから最近まではあれこれと治安も悪かったようだが、
そうした家賃の安いところにアーティストや
インディペンデントギャラリーが集まり、今の賑わいがあるという。

まだどこのギャラリーもオープン前だが、
窓からのぞくだけでも刺激的な作品が見られる。
オープン前のヘリオンギャラリーにお邪魔し、荷物を置かせてもらって
ホテルのチェックインまであれこれと散策をすることに。



ギャラリーの中。右手の奥にヘリオンギャラリー。


先ほどの重いパンケーキが残っているため、まったく腹が減らないまま、
腹具合だけが悪くなるという恐ろしさの中で、
開いた地図にトイレの場所を書き込むオリエンテーリングを行った。


ホテルに泊まった後は夕食。
イタリア料理のファミレスに入って、
「空飛ぶスパゲッティモンスター教」のようなミートボールパスタを。
僕は今回、映画や漫画に出てくるような食べ物を食べまくるというテーマをもっており、
この旅はその点では大成功だった。
そして大抵が想像以上にヤバイ味付けであった。


ポートランドで人気の「ブードゥードーナツ」。
ブードゥー教をテーマにしたドーナツショップとは…!
味もまた脅威的で、クリスピークリームドーナツの2倍は甘い。

でも、本場のホットドッグはやはり美味過ぎた…!

時差ボケもあり、ビールの一本も飲まずして就寝。


11日
いや、到着したのが日本時間の11日で・・・
と考えると実に面倒くさいので、「2日目」ということにしよう。
二日目は昼に、ネットで予約した
「日本人のガイドが教える地元のポイントと電車&バスの乗り方講座」を受ける。
そしてこのガイドの方だが、なんと現地のアーティストだったのだ。
田尻奈緒さんという陶芸家の方で、ダウンタウンから外れたところに
スタジオもあり、現地のアーティストの生活スタイルなどを
聞きたかった身としては、講習そっちのけで話し込む。

後日スタジオに遊びにゆく約束をして別れ、その後はオレゴンズーという動物園に。
オレゴンの象徴でもある動物、ビーバーを間近に見るのは初めてで、
意外とのっそりした動きがかわいく、じっと見ていたら思わぬ時間を取られ、
閉園間際の動物園内をビーバーらしさをまったく見せずに走るのだった。

*写真
動物園のベンチにいたリスの銅像。実にヘンな顔。


夜はマットの自宅にて夕食をご馳走になる。
マットの友人のマイケル・アリソン夫妻とも会う。
マイケルは日本語が堪能であり、田尻さんとも友人という。
広いアメリカで世界の狭さを知る。


*写真
マット・ワグナーさん。
手に持っているのはいずみ朔庵さんが絵を描いている
名所神経衰弱である「日本の思い出カード」。これが大人気だった。

夜はマットが主催するというクラブイベントにも。

夢中で踊りを踊っているポートランドっ子も、壁面に映された
実写映画版「鉄人28号」で鉄人が出てくるところで動きが止まるというのが面白かった。

3日目

昼はダウンタウン周辺のアートギャラリーを巡ったり、
買い物をしたりとブラブラする。

夜はマイケルの家に遊びに行く。
昨日出合ってからすぐに家で食事というのもアメリカ流なのか。

その日はマイケルのお姉さんやアリソンのお母さんなど、
様々な人が来ていて
スキヤキを食べながらクラブダンスの踊りの振り付けを習ったりなんだりと、ザ・国際交流という形の中で楽しく食事とビールを。

マイケルのお姉さんと付き合っている
Craigが突然ゴボウを使って宮本武蔵のマネをする中、
アリソンのお母さんから「ドントプレイマイゴボウ!!」
と怒られるという一コマには笑った。
何考えてるんだほんとに。


ゴボウを構えるcraig。そして国際交流の図。



マイケルの家には大道社から出ている「地獄シリーズ」の漫画があった!
EMUさんに見せたかったので、それを持つマイケルを撮る。


しかし、マットやマイケルの家に行ったが、
アメリカではアートを飾る文化がある。というのがあらためてわかる。
やはり家が広い。使える壁がたくさんある。というのはすごい条件だ
(あと、壁に自由に穴を開けてもいいというところもポイントか)。

後で遊びに行ったアーティストのスタジオもそうだが、
ワンルームアパートより安い値段でそこより広い空間が借りられるというから恐ろしい。
サイズに合わせた作品だからこそ、迫力も生まれるということか。
そして日本の小さい額に入れた作品は逆に「かわいい」と言われて喜ばれるから、自分はこっち方面でいきますよ。いや行かざるをえない…


4日目
午前中は「POWELL BOOKS」というアメリカ最大級の書店にて買い物。
これがもう楽しくて楽しくて!一日中いられる空間だったよ。
ジョージさんやスーパーログさん好みだろうな…という本も多くあり、
一緒に行きたいなと思った。


午後にはマイケルの車に乗って奈緒さんのスタジオに。

穀物の保管庫を改築したというアートスタジオでは、
多くの若いアーティストが部屋を借りている。
天井も高く、エレベーター設備もあり、こりゃスケールも大きくなるぜ。
奈緒さんの陶芸作品を見ることができて満足。いくつか購入させてもらった。

その後はマイケルに案内されて、
小学校をホテル&レストランに改築した「ケネディスクール」や、
ミシシッピ通りの町並みなどを見る。
特にミシシッピ通りではアツい事件もおこったが、これはトークライブでぜひ話したい!

マイケルに途中の通りで降ろしてもらい、買い物などを。
そのうちに雨が降り出し、近くのカフェでハンバーガーを食べてホテルに戻る。
途中でフローズンヨーグルトの店にも。
ポートランドではいま流行っているとのこと。


好きなサイズのカップを選び、
好きなだけ様々なフレーバーのフローズンヨーグルトを巻いて
各種トッピングをして、重さを量って料金を出すというスタイル。
大体300円前後で一人前となる。
これは日本にも来るんじゃないかな…。かわいい盛り付け大会とかできそうだし、何せ美味い。



夜は部屋でビールを飲みながら荷造りを。


5日目
空港に行き、チンチンに熱した機内食を食べて寝て、配られたアイスを食べて
寝てから映画を2本観たら着いていた。
ということで、戻ってきました!
しかし、今回の旅は実りがありました。
先の個展だったアルファベットブック「Freinds oF Fantasy ABC」を見せたところ、
英語圏の人にも実に評判がよかった。
「絵もそうだが、文章が日本人が書いたものだとわかるところが逆にいい」というもの。
なるほど。これで僕も北米進出ができるだろうか?と、出版化に向けてのあれこれの企みが出ますね。

もちろん、奥さんの展示も実によかったですぜ!
今月いっぱいということで、お近くに来られる方はぜひ。
http://www.helliongallery.com/?page_id=265